10年前。
あたしの全盛期だ。
そう、8歳。ほんとそんな年で、全盛期が過ぎた。
すくなくとも、この18年強の人生の中では全盛期だった。
毎年祝われる誕生日
毎年行く家族旅行
毎年咲くさくら
そして
毎日いる両親
年が二桁になるころには
誕生日は自分の権利の保護のためと祝われ
旅行は母と二人になり
さくらも見に行かなくなる
そしてあたしは毎日がやってくることをこころから呪う
どすぐろい面白みのない子になってゆくのだ。
どれだけ生活を改善しても
立ち止まって動けなくなるほどの恐怖感が襲ってくる。
ひとが自分をせせらわらっている気がする。
曇りなく、疑いなく毎日を送れたのは
やっぱり年が一桁だった時代のみ。
忘れられない大事なものは
ぜんぶそのころにぎゅっとつまっている。
でも
でもね
その記憶が、時間の経過とともにどうしてもうすれていく。
復元などできない。
どうしたってできない。
あの10年前の時間は、どうしてもよみがえらない。
「どーしょーもないこと」ってあるんだなぁって思った。
だから、留学するんだね。
海外に行くんだったね。
べつのところで自分のつぎの故郷を作るんだったね。
そこで今度こそ、うすれない思い出を作るんだった。
うん。
はたち。
イタリアの地で、どろどろの10代の次のページをめくるんだよ。
20代の最初の数行を、そこで生きたいんだ。