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心のものがたり「ポロンの木」

生涯を通して、わたしの心にのこるであろうことをものがたりにしました。
どうぞお読みください。
 
 
・・・・・・・・
 


「ポロンの木」 ここやあんず
 
子どもたちが列を作っています。あなたもそのうちのひとりです。
その先には、みんなをつくった神様がいます。
神様は、子どもたちひとりひとりに種をくれました。
丸くて親ゆびのさきくらいの種です。
「それは、これから君たちが育てるポロンの種だよ」
あなたはそれじゃあ大事にしなくちゃと種をギュッとにぎりました。
全員に種がいきわたると、神様はゆびをぱちんと鳴らしました。
すると子どもたちひとりひとりの目の前に大人のひとが現れました。
「この人達は植木屋さんです。ポロンの種を育てるのを手伝ってくれます」
あなたの目の前にも一人の植木屋さんがにっこり笑って立っていました。
「植木屋さんも自分のポロンの木を育てたことがあるから、なんでも教えてもらいなさい」
神様はそういって、その場を後にしました。
「ほんとう?」
あなたは目を輝かせて植木屋さんに聞きました。
「うん、ほんとうだよ、だから安心して」
周りの子供達もそうしたように、あなたは植木屋さんと手をつないで、植木屋さんのお庭へ歩いて行きました。
 
「うわぁ、すごい!」
植木屋さんの木は、想像以上にりっぱでした。
枝が生い茂って、葉っぱはみずみずしく、おいしそうな果実がなっていました。
あなたはびっくりすると同時に、なんてすごい植木屋さんに出会えたんだろうと嬉しく思いました。
「あの果物、たべてみたいよ」
あなたはあまりに美味しそうに輝く果実を指さしてそういいました。
「もちろんいいよ」
植木屋さんは、にこにこして果実をもぐと、あなたに差し出してくれました。
あなたはその果実の表面がつやつやとしている様子にうっとりし
大きく口を開けてかぶりつきました。あまい、とっても美味しい果実でした。
さて、いよいよあなたがポロンの種をうめるときがきました。
植木屋さんが手伝ってくれて、植木屋さんのポロンの木のすぐそばに穴を掘って、あなたはそこに種を大事に大事にうめました。
植木屋さんは自分の井戸のお水をあなたにたくさんくれました。
そのおかげであなたのポロンの木は、あなたの膝くらいの高さに育ちました。
 
あなたは他の子供達の様子を見に行くことも出来ました。
他の子の植木屋さんの木や井戸は、あなたの植木屋さんのものよりも大きいことも小さいこともありましたが、
一番おどろいたのは、果実がみんな違うことでした。
あなたが食べたあの美味しい果実は、あの植木屋さんにしか作れないのだと知りました。
 
 
みんなの木を見まわって戻ってくると、ビッシャーンと大きな音がしました。
あなたは驚いて植木屋さんの方へ走って行くと、さあたいへんです。
植木屋さんのポロンの木にかみなりがとつぜん落ちたのです。
枝はばらばら、葉っぱもぐちゃぐちゃ、あのおいしそうな果実もかなしくしぼんでしまっています。
植木屋さんは自分の木の前でおいおいと泣いています。神様から貰った大事な木。
あなたは一緒に涙を流しました。
 
植木屋さんはしばらくのあいだ、遠くを見つめたまま何も言いませんでした。
あなたはその様子をじっと見ていました。胸が潰れそうでした。
植木屋さんがかわいそうでかわいそうでなりませんでした。
 
またしばらくして、植木屋さんはハッと顔を上げました。
「水がたくさんあればなんとかなるかもしれない」
あなたは心で「やった!」と叫びました。
なぜって、植木屋さんの木が助かるかもしれないからです。
「手伝って!」
植木屋さんはそう叫ぶと、井戸まで走ってお水をバシャバシャくんできて自分のポロンの木にかけました。
あなたも植木屋さんと同じように大人とおなじ量の水を運びました。
とっても重かったのですが、植木屋さんのためならなんてことありませんでした。
来る日も来る日も水をかけました。
そうするとほんの少しですが、植木屋さんのポロンの木が元気を取り戻すようでした。
そのたびに植木屋さんとあなたは手を取り合って喜び、また来る日も来る日も水をかけました。
 
そんなことをずっと続けているうち、植木屋さんは笑顔をとりもどすようになりました。
「よーし、こうやってお水をあげればなんてことないさ」
植木屋さんは自分のポロンの木に元気よくお水をかけています。
あなたはほっとして、地面におしりをつきました。
いたい。何かが当たりました。
なんだろうと思って見てみたら、カリカリに枯れてしまったあなたのポロンの木でした。
 
 
「たいへん!」
あなたは声を上げました。
「どうしよう、神様に貰った大事なポロンの木をほっぽらかしちゃった」
お水を運ぶ植木屋さんに、あなたは血相を変えて泣きつきました。
「えっ大変だ」
あなたは悲しくて涙が止まりません。神様に謝って、助けてもらおう。そう思ってお庭をあとにしようとしました。
すると植木屋さんが慌ててあなたの手を掴みました。
「ちょっと待ってどこにいくの?こんな小さな子の木を枯らしちゃったのが神様に見つかったら、わたしが怒られちゃう」
あなたは植木屋さんが怒られるなんて知りませんでした。
そっか、これは内緒なんだ。あなたは神様に謝りたい気持ちをぐっとこらえて、涙をふきました。
 
あなたは自分のポロンの木にたくさんお水をかけました。
植木屋さんの木が少し元気になったんだから、自分の木だって。そう思ったのです。
「あれ?」
すると植木屋さんが井戸をのぞきこんでいます。
「お水がきょうはもうない、どうしよう」
植木屋さんが慌てています。あなたは、しまったと思いました。
あなたがお水を使ってしまうと植木屋さんの分がなくなってしまうのです。
ほかの植木屋さんの井戸にはお水がありそうでしたが、頼んだら木のことがバレてしまいます。
植木屋さんはゆっくりと枯れていく自分のポロンの木の前でまたおいおいと泣きました。
「あんなにがんばってお水をかけたのに…」
あなたは植木屋さんがくれた果物の味が忘れられませんでした。
あのおいしい果物がもう二度と食べられなくなっちゃうなんて嫌だ!
あなたは植木屋さんにたくさん謝りました。植木屋さんは何も答えませんでした。
 
 
それからずっと、あなたは植木屋さんの木が枯れ始めると
植木屋さんより早くお水を持ってきて、植木屋さんの木にかけました。
「ありがとう…」
元気の無い声ですが、植木屋さんがそう言ってくれると、あなたはほっとしました。
あなたの木が枯れているのをあなたは覚えていましたが、いま植木屋さんに頼んだらかわいそうだと思いました。
だって植木屋さんは、かみなりが落ちた日から、元気をなくしてしまっているんですから。
はやく植木屋さんの木を元気にして、二人であなたの木にお水をやったら、どんなに心強いでしょう。
植木屋さんとあの果物を一緒に食べてがんばれば、すぐにあなたの木は元気になると思いました。
 
植木屋さんとあなたががんばったので、植木屋さんの木はなんとかあの果実のみすみずしさを取り戻しました。
あなたは大きく歓声を上げて、植木屋さんとハイタッチをしました。
あなたは重いお水を何度も運んだせいで、腕と足ががパンパンにはれていましたが気になりませんでした。
植木屋さんは、ポロンの木にかみなりが落ちたあとが残っているのが気になっているみたいでしたが
「だいぶましになった」といっていました。
あなたは植木屋さんにあの果物をまた欲しいと言いましたが、
また木に何かあったら大変だからと、植木屋さんはくれませんでした。
あなたはとてもがっかりしましたが、植木屋さんの木のほうが大切です。
 
「ねぇ、植木屋さん、こんどはこっちの木にお水をかけて」
あなたは植木屋さんの袖を引っ張り、あなたの木を指さしました。
すると植木屋さんは困ったような顔をしました。
「あなたはね、もう「おとな」になったんだ、ほら見てごらん、背がわたしと同じだよ」
あなたは自分が大きくなっていることに気が付きませんでした。
「おとなになるとね、自分のお庭を持つんだ、そのうち神様が迎えに来てお庭にはこんでくださるよ」
植木屋さんは自分のポロンの木の葉っぱをさわりながらそう言いました。
「えっ、でもそうしたら、この木が枯れちゃったこと、バレちゃうよ?」
「そうだけど、おとなになったらじぶんの木の責任はじぶんでとるんだよ」
植木屋さんは平然といってのけました。
あなたはそのときはじめて、植木屋さんが少し変だと思いました。
 
 
植木屋さんの言っていたとおり、神様がやってきてあなたとあなたのポロンの木を
植木屋さんのお庭からあなたのお庭へとうつしました。
神様はあなたの木を見て怒ってしまい、あなたの井戸を半分の大きさにしてしまいました。
おとなたち(むかしあなたと並んでいた子どもたちです)があなたの庭を通りかかるたび
不思議そうな顔をしました。
あなたは自分の木が枯れていることが恥ずかしくて恥ずかしくて
腕と足が痛いまま、小さな井戸からありったけの水を運び続けました。
けれど、やっぱりお水が足りないのか、あなたのポロンの木は元気になりません。
 
あなたはいらいらして、自分のポロンの木をけっとばしたり、
それを後悔してたくさん泣いたりしているうちに
すっかり痩せてしまいました。
「もともとは植木屋さんの木ばっかりにお水をあげたのがよくなかったんだ」
あなたはそう気が付き、ぱっと顔を上げました。
「そうだ、植木屋さんがいけないんだ」
 
あなたは植木屋さんのお庭へ走っていきました。
自分の木がまだ枯れていること、植木屋さんに助けて貰いたいこと、お水を分けてほしいこと…
言いたいことはたくさんありました。
 
植木屋さんの庭の前につきました。
ポロンの木は、傷はついてしまいましたがだいぶ元気になっていました。
あなたは植木屋さんの後ろ姿を見つけて声をかけようとしましたが、やめてしまいました。
植木屋さんが自分のポロンの木にバシャバシャ水をかけて嬉しそうに微笑んでいたのです。
まるで最初に果実を食べさせてくれたときのような笑顔です。
もしこれであなたがお水が足りないと言ったら、植木屋さんの木がまた枯れてしまうかもしれません。
 
植木屋さんは一度大きくて美味しい果物をくれたのです。
もう困らせたくありませんでした。
あなたはとぼとぼと、自分の庭にもどりました。
 
 
どんなに少なくても、お水をかけていればきっと良くなる。
あなたはそう信じて、せっせと枯れた木にお水をやりました。
 
しかしもうあなたはヘトヘトです。
あなたは枯れた木を見ても枯れていることがわからなくなっていきました。
だって、いつ見てもおなじなんですから。
日に日に体を動かすのが辛くなってきました。
 
そんなあなたを、まわりのひとは「げんきがないやつ」「やるきのないこ」「へんなこ」と呼びました。
まわりのひとの木は順調だったのでしょうか、植木屋さんの果実をたくさんもらえたのでしょうか、あなたはとても怖くてそれを確かめられません。
なかには、はやくも神様から子供を預かって、植木屋さんになるひとまでいると言うではありませんか。
あなたは自分の木さえもきちんと育てられない自分がきらいになってしまいそうです。
 
 
悲しくて悲しくて、また痩せてしまいました。
そして、元気な木がどんなものだったかも、もうわからなくなりました。
 
震える手でお水を運んでいるうちに
あなたはすっかりなんでもを忘れてしまいました。
あとすこしでお水をあげることも忘れてしまいそうです。
 
ただ覚えているのは、植木屋さんがくれたあのおいしい果物の味だけ。
けれどそれを口にできることは、もうないのでした。
 

 
・・・・・・・
わたしが機能不全家庭で育ち、その後どう感じていたかを
健全な家庭で育った方にも伝わるように、喩え話にしてみました。
 
わたしをはじめ、
これでもなお自分の木を諦めず水をあげつづけている人間への
まわりのかたの認知と理解を、わたしは強く望みます。
 
また、いままさに植木屋さんに水を独占されているこどもを
どうぞ助けてあげてください。
  
 
あくまでこれはわたしのケースをモデルにした物語ですが、
機能不全家庭で育った人のきもちを、そうでない人に理解してもらう足がかりとなれば、幸いです。
 
あなた、というのは子供。植木屋さんは、両親。果実は、愛情。木は、人生。神様は、この世の中。井戸は精神的エネルギーの源を、それぞれ指しています。
 
 
アダルトチルドレンを自覚する方、被虐待経験を持つ方にかぎらず、全文、またはその一部の転載を許可します。
(文章の修正など予告なく行う可能性があります。ご了承ください。)
 
 
どうか世界中の子どもが、果実を十分に食べられますように。
 
ここやあんず
 
 
IMG_2316.jpg

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2013.01.20 | | 短編小説



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プロフィール

九屋あんず

Author:九屋あんず
脚本、イラスト、文筆など。
1988/03/31生まれ。 
公式サイト
ここやあんずにInterview

写真撮影:栗原大輔さん
メイク:都築孝子さん

アクセスありがとうございます



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